前回紹介した「自叙伝的な聞き方」ではお互いのコミュニケーションをきちんととることはできません。真のコミュニケーションに至るには、もっといい方法があります。
それは、「心から耳を傾ける」という方法です。
ただし、この方法をとるには次の三つのことを同時に行わなければなりません。
第一に、「目と胸と耳で聴く」です。「聴く」ということ(この漢字の違いにも注目してください。「聴く」には「耳」と「目」と「心」が入っています)が大切なのです。
ただ耳で聞くだけではコミュニケーションをうまくとることはできません。ある研究によると、言葉のみによるコミュニケーションは全体のわずかにすぎないという結果もあるようです。コミュニケーションにおいては、声の調子や雰囲気が大きく左右します。たとえば、次の同じ言葉でもどこにアクセントを置くかで、意味は全く違ってきます。
相手がいわんとしていることを知るには、言葉には出てこない心の声を聞き取る必要があります。上辺ではどんなに気難しそうな人でも、ほとんどの人は内面に弱さを抱えていて、相手から理解されたいと心から望んでいるのです。
第二に「相手の靴を履く」ということです。誠実な聞き手になるには、自分の靴を脱いで、相手の靴を履く必要があります。つまり、人がどんなふうに世界を見ているか、どんな風に感じているかを理解しようとする姿勢が大事なのです。
会話は競争ではありません。どちらが勝って、どちらが負けることではなく、お互いが理解することが目的なのです。かけているめがねの色が皆それぞれに違うのですから、見え方も当然異なるわけです。相手の立場に立つことで、それまでとは見え方が全く違って
くることも少なくありません。
第三に「ミラーリング」をします。ミラーリングとは、他人が言うこと、感じていることを自分の言葉で繰り返すことです。鏡は映し出すだけであって、評価を下したり、アドバイスしたりすることはありません。
「おうむ返し」に少し似ていますが、違うものです。おうむ返しが「同じ言葉そのものを繰り返す」のに対し、ミラーリングは、「言葉でなく、意味を繰り返す」ものであり、必ず「あなたの言葉」を使います。
おうむ返しは機械的で冷たい雰囲気がありますが、ミラーリングには、温かくて親身な雰囲気が漂います。ミラーリングの際に役立つフレーズを紹介しましょう。
ただし、ミラーリングもまた一つのスキルにすぎません。あなたが相手を本当に理解したいという気持ちを持つことが一番大切なのです。
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