ビジネスの基本、タイム・マネジメントを身につけよう!
この春たくさんの方が、高校から大学、大学から企業へと、旅立ちを迎えられることでしょう。
特に新入社員となる人にとっては、学ぶ立場からアウトプットを出して貢献する立場へと、大きく変化します。
とりわけ、時間の使い方がこれまでとは大きく変わるでしょう。
「フレッシャーズのためのタイム・マネジメント事始め」としてフランクリン・プランニング・システムから少しだけご紹介します。
スティーブン・R・コヴィー博士が書いたベストセラーに『7つの習慣 人格主義の回復』(キングベアー出版)という本があります。フランクリン・プランナーはこの「7つの習慣」を実践していくための手帳でもありますが、この本の中でコヴィー博士がこのように語っています。
「すべてのものは二度作られる」
なにごとにおいても、まず頭の中で考え(知的に創造し)、そして実際にモノづくりを行う(物的に創造する)という意味です。
料理や建築物を思いうかべればあたりまえのことなのですが、手帳を使って計画をたてるということも同じことです。行動という物的な創造の前に、きちんと計画(=知的創造)をたてるということです。
知的創造(=第一の創造)が具体的で明確であればあるほど、物的創造(=第二の創造)はあなたのイメージ通りに仕上がり、満足できる結果を得られます。逆に、第一の創造=知的創造がうまく描けないと、途中でのやり直しや修正が多くなり、物的創造が失敗する危険性も高くなります。
あなたの人生やこれから始まるビジネスについて、知的に創造していますか?人生やビジネスにおいても、料理や建築物のように、レシピや設計図を準備していますか?
フランクリン・プランナーでは、この人生の知的創造を記したものを「ミッション・ステートメント」(人生の指針)と呼んでいますが、あなたも、この春、人生の大きな節目ともいえるこの時期に、あなたの人生における「知的創造」について考えてみませんか。
ミッション・ステートメントに取り組むということは、自分自身が強く信じ、一生をかけて取り組むものは何なのか、という問いに真剣に向き合うことになります。
フレッシャーズの方にとって、今の時期は、人生の分岐点ともいえる時期です。ぜひ、このミッション・ステートメントづくりに取り組んでみてください。
今度は、明確になったあなたの人生の指針に基づいた具体的な目標を設定していきます。
どんなに素晴らしい夢や指針を持っていたとしても、「いつかやろう」「そのうち…」というスタンスでは、決して実現することはできません。そこに期限を設け、明確な目標として設定することで、現実に近づけていくことが可能になるのです。
まず仕事の目標を考えてみましょう。仕事を通して、何を成し遂げたいのか、どのようなスキルを得たいのか、何に対して貢献したいのか、など、真剣に考えてみましょう。
そして、今度は、その目標をもう少し具体的にしていきます。具体的にするということは、「いつ」「どこで」「何を」をはっきりと定義することです。それによって、目標のターゲットが明確になり、実現に近づきます。
たとえば、「英語をマスターする」という目標を達成するには、「何を?:英語で話す力をつける」「いつ?:来年の1年間で」「どこで?:自宅近くの英会話学校で」という具合に定義していきます。このシンプルで基本的な「何を」「いつ」「どこで」を定義することで、目標は一気に具体性を帯びてきます。何をするか、期日となるターゲット、場所が明確になり、具体的な実現したイメージを持つことができるようになるのです。
目標が設定できたら、次は実現可能なステップへの落とし込みを行います。このブレークダウンが目標実現へのカギを握ります。大きな目標であればあるほど、一気に成し遂げるのは困難なもの。ちょうど、フルマラソンでペース配分を考え、計画的な走りをしながらゴールを目指すことに似ています。
目標達成のために、どのようなステップを踏めばいいのかを列挙していきましょう。
今の段階では、厳密なステップにする必要はありません。
必ず、計画の見直しをする機会が訪れます。目標を設定するということは、未知の世界に踏み込むということですから、さまざまな予想以外のことが起こるでしょう。今の段階で、厳密な計画は、逆に非現実的なことです。ステップの設定が終ったら、ステップの優先順位を書き入れて、それぞれに期限を設定しましょう。
時間管理を行う目的は、生産性を上げるためでもあるのですが、突き詰めて考えれば、成果を高めるには、自分自身の能力を伸ばすしかありません。
つまり、日々、自分自身を高め、成長させなければならないのです。
「7つの習慣」では、この自分を磨くことを「刃を研ぐ」と呼んでおり、フランクリン・プランナーには、毎週自分を磨く活動を計画する欄を設けています。
そこには、「刃を研ぐ」活動として「肉体」「社会・情緒」「知性」「精神」の4つのカテゴリーがあります。これはあなた自身が成果を生み出すために必要な4つの分野というわけです。
多くの人たちが、肉体面でも自分の体を酷使するばかりで、定期的な「刃を研ぐ」活動を忘れてしまいます。本を読んだり、人脈を広げたりする活動なしに、昨日と違う成果を出すことなどできません。
タイム・マネジメントは日本語では時間管理と訳されます。しかし、当たり前のことですが、人間は時間を管理することはできないのです。
時間はあらゆる人に平等に与えられています。どんなに毎日をがんばっても、1日は24時間でそれ以上の時間を作り出すことはできません。真のタイム・マネジメントとは、時間を増やしたり、減らしたりすることではなく、限られた時間をいかに有意義に過ごすかを学ぶものに他なりません。つまり、時間管理とは、時間を管理するのではなく、自分の行動を管理することなのです。
想定していた時間内に終わりそうにないとき、見込み時間の甘さ、能力不足、その他の案件対応、ニーズの理解不足、さまざまな原因が考えられますが、すべて、あなたが事前に行動を計画し、準備していれば対応できていたことばかりです。時間を動かすことはできません。その時間をどのように使うのか、この一点にかかっているのです。
フランクリン・プランナーではこの毎日自分が行う行動を「タスク」と呼んでいます。
そしてその行動を計画・管理することで、生産性を生み出していきます。
では、実際にタイム・マネジメントを行う前に、「行動」の二つの概念を押さえておきましょう。
簡単なことですが、フランクリン・プランナーでは、実行時間が定められたものを「時間固定」のある「スケジュール欄」に記入し、時間の制約がない行動を「時間自由」として「タスク欄」に記入していきます。
「クライアントに期日を確認する」といったタスクは、今日のいつ行うか時間が固定されていないので「タスク・リスト欄」に書き入れますが、「クライアントとの打ち合わせ」や「プロジェクト会議」など時間が決まっているものは「スケジュール欄」に書き入れます。
この行動における「時間自由」と「時間固定」を区別して考えていくのがタイム・マネジメントなのです。
本来行動は、時間を固定し「スケジュール」として組み込んだ方が実行しやすくなるものです。しかし、日々の行動の中には実行時間を決める必要がなさそうな細かな行動や仕事相手の状況を考えながら依頼しなければならない行動もあります。
こういったものにまで、「今日の何時に実行する!」と計画していては、日常生活はとても窮屈なものになってしまいます。
当然ながら1日24時間の中で行えることは物理的に限られているので、この「時間自由のタスク」と「時間固定のスケジュール」のバランスをとっていくことがタイム・マネジメントのカギを握るのです。
新社会人としての最初は、ほとんどの場合、先輩や上司から指示され、その通りに行動しますが、そういう時期はほんのわずかです。むしろ、「新人だから許される」時期は、ほとんどないと考えたほうがいいかもしれませんし、すぐに、自ら考えて行動しなければならなくなります。
つまり、自分独自の個性や才能、能力を発揮する必要があります。
そのときに覚えていただきたいのが、PLAN(計画)―DO(実行)―SEE(評価)のサイクルです。
少しずつ現場での経験を積み重ねていけば、その場で判断しなければならないことや、自分で考え行動しなければならないことが増えてきます。
ここで自分が考えることを放棄し、言われたことをやるだけのビジネス・パーソンでは、課題解決型のビジネス・パーソンとしての成長は期待できません。
実際に行動を起こす際には、先輩社員や上司の判断を仰がなければなりませんが、自分で考え計画する習慣を持つことは非常に大切なことです。
このサイクルを回すことができるようになれば、あなたの仕事のクオリティが上がり、ビジネス・パーソンとしての成長も早くなりますが、この「P-D-S」を回すうえで、重要になってくるのが、あなたの持つ価値観です。
「PLAN」において、判断基準の重要性について触れましたが、どのような計画を立てるかは、あなたがどのような判断基準を持っているか、つまりどのような価値観であるかに大きく依存します。
私たちの行動を支えているものは、個人個人の持つ価値観であり、価値観がすべての土台となります。
新入社員の間、成長途上の段階においては、正しい価値観を持つための努力をするようにしてください。いくら素晴らしいビジネススキルを持っていても、意思決定する際の判断基準が間違えていれば、意味がありません。
組織の存在意義、長期的な人間関係、自己成長などにおいて、(論理的にも倫理的にも正しい)価値観が定まっていないと、正しい意思決定はできません。
また、土台がしっかりしていれば、自信を持って実行できるので、得られる結果も大きいでしょう。私たちの行動はすべて価値観からもたされるものであり、また計画・行動が価値観と一致したときに、私たちは心から充足感や、真の納得感を得ることができるのです。
例えば、あなたは商品開発部門にいたとして、あなたの価値観が「顧客貢献」を第一にかかげていたとすれば、会社の短期的な利益のみを追い求めるような商品開発の意見に対し、あなたは堂々と、自分の心に正直に反対意見を唱えることができるでしょう。
また、会社からの命令で、肉体的にも精神的にも現在の仕事よりも厳しい仕事を与えられたとしても、あなたの価値観が「何事にも挑戦し、自分の可能性を広げる」であれば、喜んでチャレンジしたいと思うでしょう。
これからの長いビジネス人生を歩み始めるにあたって、将来に向けた成長、仕事の満足度、様々なことにおいて、自分自身の価値観について考え直すことはとても意義あることです。