ビジネス・エグゼクティブのためのタイム・マネジメント
1. 与えられた目標と自分の価値観とを結びつける

ビジネス・エグゼクティブは経営や事業計画にコミットメントし、ゴールに向かって数々の意思決定を行わなければなりません。成果を達成するには、自分はもちろん、チームメンバーをもサポートするタイム・マネジメントが求められます。

●与えられた目標と自分の価値観とを結びつける

タイム・マネジメントにおいて、目標設定は必須です。与えられた目標にしろ、自ら設定した目標にしろ、目標をいかに効率的・能率的に実現するかがタイム・マネジメントです。

ビジネス・パーソンは、売上額、顧客満足度、利益率、回転率、顧客数、稼働日数など、さまざまな目標にコミットメントして毎日活動しているはずです。ましてエグゼクティブともなれば、自分だけでなく部下をサポートしつつ、目標を達成しなければなりません。

目標を達成するには、独自の貢献を導き、価値観との整合性を図らなければなりません。しかも、エグゼクティブとしてチームメンバーの力を最大限引き出すことが求められます。

そのためには、今抱えている目標をこれまでとは異なる視点で見る必要があります。同じ「売上目標」であっても、ベースにある価値観と照らし合わせ、なぜその売り上げを達成するかを考えることで、価値観と目標との間につながりを感じ、内発的な動機が生まれ、チームメンバーにも自信を持って説明できます。

今持っている目標と独自の貢献から導かれた価値観とをいかに結びつけるか、これが目標設定の大きなポイントとなります。しかし、経営計画で決定された目標と、自分の価値観やコントリビューション・ステートメントとのリンクを図ることなく、そのまま受け止め、実行するだけでは、かえってストレスを溜め込んだり、価値観とのギャップに悩むことになりかねません。たとえうまく目標が達成されたとしても、心からの達成感や充足感はなく、疲労感だけが残るケースも少なくありません。

「現在の仕事で与えられた目標に納得がいかない」「仕事の目標と価値観が合わない」と考えている人は多いものです。ここでもう一度、自分の目標と価値観とのリンクを考えてみましょう。

●主体的な目標を設定することは現状と対立すること

組織の価値観や目標とのリンクを図ることができ、自分自身の目標として深く納得することができ、結果に対しても納得することができたあなたは、次のステップに移ることになります。それは、あなた自らが選択し、新たな目標を設定することです。

主体的な目標を設定するということは、戦略的に現状を変革していくということでもあります。つまり現状と対立することにもなり、新しい分野を開拓することはワクワクする反面、時として大変な思いをすることにもなるでしょう。

これまで慣れ親しんだ習慣を捨てるのは大変なことです。これは熱気球が飛び立つ様子に似ています。重りが現状、あなたは熱気球、そして目標は空の彼方にあります。熱気球が空中に浮かぶには、地上に固定している重りを解き放たなければなりません。

また、現状を変えるということは、あなたの周囲にも影響を与えることになります。それによってお互いの利害に変化が生じることもあるだろうし、変化をよしとしない人も出てくるでしょう。この壁を乗り越えていかない限り、目標の実現はないということを理解しておかなければなりません。

●目標設定のポイント

目標を設定するときのポイントとして、コヴィー博士が『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)で提案しているポイントを紹介しましょう。

「ミッションへの道筋となる目標」を設定する

目標とその理由、方法について、「何を、なぜ、どのように」と考えることによって、ミッションと原則と目標を結びつけることができます。たとえば、あなたの目標が「健康を維持すること」である場合を考えてみましょう。

その理由は、「ミッションを遂行するために必要な体力・忍耐力を保つため、子どもの健康維持の模範となるため、精神を鍛えるため」となります。その方法は、「バランスのとれた食事をする。週に2回は4キロ歩く。7時間は睡眠をとる。読書をしたりセミナーに参加して健康に関する知識を増やす」という具合です。

「希望課題リスト」をつける

目標を設定する場合、やりたいことが多すぎて自分が本当にやりたいことがわからなくなってしまう場合があるかもしれません。それはまだ目標を設定する準備ができていないためです。そこで、役割ごとに希望課題(自分がしたいと思うこと)を書き出してみましょう。

ポイントは「希望課題リスト」にアイデアを書き出しておけば、後で再検討できるということです。つまり、週間計画を立てるときに、そのリストを見直すことで、いずれかを週の目標にすることができます。

「週単位の目標」を設定する

週単位の目標を設定するとき、「何を、なぜ、どのように」という設問は、自分の役割や目標について考えることを助けてくれます。「今週、この役割において最も影響力が大きく、かつ重要といえることは何か」という問いに対する回答は、自分のミッションと役割を見直すことで得ることができます。

それぞれの役割における「道筋となる目標」を見直すことで、やるべきことが浮かんできます。「希望課題リスト」が、週単位の目標を設定するヒントになります。

●「こうなりたい」から「今、何をするか」へ

「いつか将来、……になりたい」

あなたはそんな風に考えたことはありませんか。おそらく何度もあるでしょう。「……」の部分は、希望すること、願いごと、大切に思っていることなど、さまざまであり、すべての人が何かしら、考えていることです。しかし、「こうなりたい(To Be)」と思っただけで何もしなければ、結局は一つも達成できず、落胆するだけです。

仮に、今日、自分の価値観の一つとして「経済的な自立」を挙げたとします。そう決めることで、将来にどういう出来事が起こってほしいかを決めていることになります。しかし、ただ価値観を決めただけで具体的な努力を怠っていたのでは、何の意味もありません。

そこで、「2016年12月31日までに経済的に自立するために1000万円貯める」と決めたとしましょう。これが「長期目標」と呼ばれるものです。「1000万円貯める」という目標はかなり具体的です。達成すると決めたその時点まで到達するには、たくさんのステップが必要になるでしょう。そこで、さらに「中間ステップ」を細かく決める必要が出てきます。

多くの人が次のように言います。

「長期目標を決めました。私は今、ここにいます。毎日毎日、目標に近づいています」

しかし、長期目標を立てたといっても、実際は頭の中をぐるぐる駆けめぐっているだけでは何も起こりません。アンソニー・ロビンズの言葉に、「多くの人が人生において何をすべきかを知っている。しかし、それを実際に行う人はほとんどいない。知っているだけでは不十分であり、行動を起こさなければならない」とあるように、結局、あなたがコントロールできるのは「今の行動」なのです。

つまり、経済的に自立できるかどうかは、そこまでのプロセス、自分の行動にかかっています。人生の他のすべてのことも同じです。目標を達成するには、そこに至るための「中間ステップ」を定め、それらすべてにおいて具体的な毎日の行動を起こすことによって、初めて目標に近づいていきます。「今何をするか(To do)」を毎日の「日課のリスト」として書き出し、それに基づいて実行することが大切なのです。

●エグゼクティブにふさわしいフランクリン・プランナー

●エグゼクティブに求められるナレッジ