Win-Winを実現するタイム・マネジメントの第一ステップは、他者に対して、どのような貢献を果たすかを自分の中で明確にすることです。
下の図は、お馴染みの「生産性のピラミッド」ですが、このモデル図の一番下は「目的」です。ここでいう目的とは、私たちが果たすべき独自の貢献を指します。Win-Winを実現するには、周囲の人たちのWinを実現しなければなりません。つまり周りの人たちのニーズに対し貢献しなければならないのです。
仕事において、あるいは家庭やプライベート、地域社会において、自分は何に対して貢献できるのでしょうか。
貢献するとは言っても、ニーズがあればなにもかにもやるということではありません。自分にしかできない貢献を見つけることが大切です。
私たちは、自分にしかできない役割を持っているということです。
役割とは責務のことでもあり、責務を言い換えれば「貢献できること」となります。これは利他的な行動であり、自分だけが利益を得ることが目的ではありません(結果として利益を得ることはありますが)。あなたに果たせる貢献とはどんなことなのか、それを自分独自の視点で考えていきます。
まず、自分が仕事の中で果たすべき役割について考えてみましょう。生活のため、給料を得るため、という考え方が一般的かもしれませんが、そこからいったん離れて、「独自の貢献」を果たすために仕事をしているというアプローチから考えてみます。
大切なことは、役割を表面的な肩書や担当的な発想で片づけてしまわないことです。仕事における役割、責務と言われると、単に「営業」や「経理担当」などとしてしまいがちですが、一歩踏み込んで、「営業として、お客様の成長に役立つ」「経理として会社の経営理念を実現する」というように、本来の目的や自分が将来的に果たしたいことという観点から考えてみます。
そういう観点から考えることができれば、単にあてがわれた役割から、自分が果たしたい役割・貢献へとパラダイムになりますので、私たちの行動も大きく変わります。
また、役割や貢献をギブ&テイクで考えるのも避けましょう。ギブ&テイクは、基本はWin-Loseの考え方です。貢献が結果として利益を得ることはできますが、利益を得ることが目的ではありません。この点で、ギブ&テイクとは決定的に異なります。ギブ&テイクは自分が与えることと引き換えに、相手からも報酬を得ることが目的です。ギブ&テイクによって短期的な成功を得ることはできますが、長期間にわたって高い効果を発揮することは難しいのです。
自分を雇われの身(社員)と考えるのではなく、ボランティアだと考えてみるのもひとつのアプローチの方法です。雇われの身と考えれば、会社から指示された職務内容や権限の中で、仕事をこなしていくことがひとつの価値観となります。
一方のボランティアと考えれば、会社からの指示命令ではなく、利他的に貢献するという「大義」が価値観となります。会社からの指示と大義の違いは明確でしょう。
会社からの命令や職務内容での指示は働く自分の外部(企業側)に存在するもので、社員は会社からそれを押し付けられるわけですが、ボランティアを動かす大義は自分の内部にあり、それゆえに自発的な活動を行います。指示・命令がお金を得るための取引であるとするならば、大義はそれが素晴らしいと思うがゆえに実行するものであり、その動機づけはあくまでその人の内部に起因します。ボランティアが恐怖心や出世欲から意思決定をすることもないでしょう。最善の結果を得るには何をすべきか、ということが彼らの判断基準になります。
常に高い生産性と成果を生み出すビジネス・パーソンと凡庸なビジネス・パーソンの大きな違いは、自発的に尽くそうとする大義を、自らの仕事に見つけられるかどうかにあると言ってもいいでしょう。