【計画しないと人から指示されたタスクになってしまう。価値観が明確になれば、何が重要かがわかる。】池上 牧甫 様

大学生でいらっしゃいますが、フランクリン・プランナーに出会ったきかっけを教えてください。

税理士の栗原さんから教えていただきました。栗原さんは、音大の学生やアーティストが経済的に自立していけるよう一緒に戦略を考えてくださったり、確定申告がわからない学生向けに無償で講座を開いてくださるなど、精力的に活動されている方で、その栗原さんが、税理士向けに時間管理の講座を開催されたときに、私も参加したのがフランクリン・プランナーとの出会いです。
さすが栗原さんだけあって面白いセミナーでした。ディスカッションのとき、周りは税理士さんが多かったのですが、親以外の社会人と話す機会が少なかった当時の私にとってはすごく新鮮な機会でした。それまで、社会に出てバリバリ働いている方は何でも自分でできて、自立して、計画も立てている、いわゆる大人というイメージをずっと持っていました。ところが、大人でも悩みもたくさん持っているし、だからこそ時間管理のセミナーに来ている。社会人になっても勉強を続ける人が、うまくその先の道を開いていく、やっぱり勉強はいつになっても大事なのだと思いました。
また、セミナーでは手帳の使い方などの機能を勉強すると思っていたのですが、受けてみるともっと深い内容でした。自分のやりたいことをやれて、かつ、自分のやりたいことで誰かの役に立つことができるツールであることは間違いないのですが、使いこなせるかどうかでこんなに結果が違うのだと感じました。今までは、手帳はただ忘れないようにするための、リマインダーの機能としか思っていませんでした。価値観を書くということがまずカルチャーショックでしたし、フランクリン・プランナーの世界は深く、こんな手帳があったんだと、すごく驚いたのを覚えています。

そのうえで使っていただくことになったわけですが、使い始めてから、どのような気づき、変化がありましたか。

まずは書くことに慣れるということから始めたのですが、一番大きかったのは、価値観を書き出すところです。書いてみると、自分でも想像もしなかったことが出てきました。自分は「これだけをやりたいと今までずっと思い込んでいたけど、実は、こっちもずっと前からやりたいと思っていたんじゃないか」とか、「ベースにある価値観がいろいろやりたいことと共通項になっている」とか、そういうことが言葉に書き出すことで可視化できるようになりました。
プランナーに1回書いたら消えないし、でも書き直すこともできます。前に考えていたことも覚えておきながら、それを新しくすることもできます。自分は何をやりたいのか迷ったときにそれを見ると、「そうだよね」って安心できる拠り所のようなものです。

テストに向けた計画や個人の目標についてはいかがですか。

日々の計画の前に、目標設定用紙を使って、やりたい目標をたくさん書くのですが、音楽は、正直に言うと締切などないような分野です。締切がないので、どうしても日々緊急なことに流されやすくなります。そこを、「この期日までにこれができるようになっておきたい」など具体的に書き出し、目標の中間地点を決めておきます。漠然と勉強を進めていくのではなく、できたことを確認しながら実行することができ、変に焦ることがなくなりました。
もちろん大学なので実技試験や座学の試験には締切がありますが、自分個人の目標でも活かせると思いました。どこまで自分が納得できるかなのだと思いますが、実技系は、前から比べるとすごく成長していても、自分で気づきにくいのが特徴です。人から評価されても、謙遜の気持ちが強すぎてうまく受け取れないこともあります。逆に、前はできていたことができなくなることもあります。そういったときに、前はどんなことを目標にしてやっていたのだろうと、また思い出すことができるのは大きいですね。漠然と感覚でやっていくと、精神的に焦りしか出てこないことが多くなるのではないかと、周りを見ていて、自分でもそう感じています。そういった中で「書き出す」という作業があるということは、日々の業務的な内容にはもちろん、そうではない創造的なものや締切がないものにおいて、まず「書いてみる」というのは、すごく大切な要素の一つだと思いました。

気持ちの変化は大きかったと思いますが、行動で変わったことはありますか。

日々の計画で、「ここだけは絶対に空けておく」という時間を意識してつくれたことです。重要ではない緊急なことが、どうしてもたくさん入ってきますから、それをいかにかわしたり、ほかの人にお願いしたりできるということを知っているのと知らないのとではだいぶ違うと思います。ただただ舞い込んでくることをやっていると、気づいたら自分の時間がなくなってしまいます。自分の時間を確保する勇気や、時間を安易に他人に売り渡さないことは、実は自分が一番苦手としているところだとずっと思っていたので、こういうことだったのかと痛感しました。今でも100%できているかと言われたら全然そうではないのですが、時間管理のマトリックスを使ってうまくやりくりしていく、そうした知識を得ることができたのは自分にとってすごく有益でした。

手帳の具体的な使い方を教えていただけますか。

例えば、これはオーディションがあるときで、一応締切があったのですが、こんなふうに項目などを書き出しています。どういうステップを踏んでいったらできるのか、自分で組み立てて書き出しておけばすごく安心です。この日までにこういうことをやったから、次はこっちに進んでいいよねとか、逆に、ここまでと決めていたけど、できていないと思ったら修正することも可能です。
こうしたステップを作成すると、次の目標を立てるときに、これくらいのスパンでこういうことができるという、自分の中で目安がたくさんつくれます。目安ができるということは、自分の取扱説明書をつくっていくような感じで安心材料が増えるんです。その基準があるとないのとでは全然違うと思っています。業務的なものもそうですし、創作活動、芸術活動という点においても、私たちの分野の人たちはないがしろにしがちで、漠然とただ努力するような人も多いのですが、こういった切り口からやっていくのも一つの手だと思います。正解は一つではないしやり方はたくさんあるのだから、自分に合った方法を探していく中で、この手帳というツールがあるのはすごくいいなと思っています。

記録しておけば、練習方法を工夫することもできます。新たな知識を入れていけば、自分の価値観がどれだけ広がったのか感じることもできます。終わりはないものだと思うので、今の時点は発展途上です。目標を書き出して、計画をして、日々使っていく中でも、たまに価値観の項目に戻ると、全然変わっていることもあります。昔の自分は真逆のことを考えていたんだなと感じることもあるくらい、日々気づかないだけでかなりの変化をしているのだと自分でびっくりすることがあるんです。それは、変わらなかったことが悪いわけでも変わったことが良いわけでもなく、もしくはその逆も然りなのですが、自分が今どういう状況にあるのか客観視できるのは、とても有益なことです。

こういう姿になりたいというような、さらに長期的な目標についてはいかがですか。

長期のスパンでは、それこそ締切がない内容になってきます。今一応書き出してはいるのですが、それをどれだけうまく、経験といろいろな知識を活かして、細かく日々の計画に落とし込んでいけるのか実験中です。
長期の目標を考えていると、書いている最中にいろいろなやりたいことが派生して出てくるんです。そのときに突然出てきたものではなく、実は自分がずっと無意識に考えていたり、潜在的に思っていたようなものが出てきたりします。ただ目標を立てて、それに向かって頑張るというだけではなく、別の目標につながったり、目標から新たにやりたいことがどんどん見つかる。そういったことが、私の場合はけっこう出てきました。それが音楽学を学びたいという思いにつながったのだと思っています。
目標を立てるという作業の中で、いつの間にか、今までの蓄積というか、自分が進んできたところを振り返るという、先のことを見ているようで過去も見るという作業になるのがすごく面白いと思いました。試験前や将来のことを考えると、あまり明るい気持ちになれない人が多くいます。逆に言うと、「ちゃんと自立して生活しないといけない」という方向だけにとらわれすぎてしまうと、「結局自分は何をやりたかったんだろう」と、もともとの価値観と今ある目標が矛盾してしまうんです。諦めちゃうと何も進まないと、最近すごく感じています。
フランクリン・プランナーは、大きく捉えると、自分をつくっている自分らしさみたいなものをきちんと保つためにあるような手帳です。私の場合、そういった面でも支えてもらっていると感じることがよくあります。

価値観、目標、スケジュールページをフル活用されていますね。

計画しないと、人が指示したタスクでいっぱいになってしまいますよね。周りで手帳を見せてもらうこともあるのですが、日々の予定を書き込んで終わりです。気づけば、自分で能動的に何かをやるということはすごく少なくて、日々なんとなく過ごしていると、やれと言われたことを一生懸命こなして終わってしまいます。書いてみると目に見えるので余計に衝撃があります。
「今、時間ある?」と聞かれたら、「物理的な時間はあります」と答えるんです(笑)。もちろん、人間関係を考えると、依頼を受けたほうがいい場合もあるのですが、結局やってみると何も生まないことのほうが多いですね。重要と思うのか、無駄だと思うのか。そこで自分の価値観がはっきりしていないと、決め切れないですよね。

こうして実践されていると、お友達にも教えたくなりますよね。

周りに伝えたいという思いはすごくありますね。音大、美大、舞台関係など、芸術方面の人は、私も含め、こういった手帳があることを知らない、そもそも考えたことがない人が多いと思います。一般大や社会人の人から、「音大生って異常に忙しいよね」という言葉をいただくこともよくあります。ロジカルに整理することに苦手意識があったとしても、知ると知らないとでは大きく違います。

これからのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

ユーザー活用事例 TOPに戻る